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新規タクシー事業の勤務スケジュール作成を、Google Calendar × Make × AI で自動化した話
2026.05.01
車両50台・ドライバー5名からスタートした新規タクシー事業者が、スケールを見据えた勤務スケジュール管理の自動化に取り組みました。Google Calendar・Make(iPaaS:クラウド連携基盤)・Gemini APIを組み合わせ、約3週間で管理者の手作業をほぼゼロにするプロトタイプを構築。2025年1月から先行稼働しています。
背景
「人は減り、需要は増える」タクシー業界で勝負する
株式会社プロジェクトID(運営:ウィングキャブ)さまは、車両50台規模を目指して2025年に立ち上がった新規タクシー事業者です。立ち上げ当初のドライバーは5名、採用を続けながら事業を拡大している段階でした。
タクシー業界の構造的な課題は数字に表れています。コロナ禍前の2019年3月末に29万人いたドライバーが、2023年3月末には23万人まで減少(約20%減)。令和6年10月末時点で回復傾向にあるものの、2029年には約6.7万人のドライバー不足が予測されています。
一方で需要は拡大しています。インバウンド回復・高齢者の移動支援・子育て世帯向けの送迎サービスなど、市場機会はむしろ広がっています。「人は減るが、需要は増える」この構造のなかで、プロジェクトIDさまが掲げた目標が 車両稼働率80% でした。同業他社の成功事例では65〜70%が水準とされており、これを大きく上回る指標です。
手作業のまま拡大すれば、管理者が先に折れる
立ち上げ当初の業務実態は以下のようでした。
- 日報は紙で運用
- 配車は経験と勘頼み
- ドライバーのシフト調整は管理者の手作業
- 売上集計やデジタコ(デジタルタコグラフ:運行記録装置)の活用は限定的
5名規模では回せていたこの運用も、採用拡大とともに管理者の負荷が増え続ける構造です。100名規模を見据えたとき、このままでは確実にスケールが止まります。
DX化を後回しにできない状況での事業スタートでした。
取り組み
「使い慣れたGoogle環境」から離れない選定
DX化の落とし穴は、規模に合わないシステムを選んでしまうことです。大手向けの高機能システムを中小事業者が導入し、機能過多で使いこなせず、コストばかり膨らんで現場に浸透しない——タクシー業界でも珍しくない失敗パターンです。
プロジェクトIDさまと検討を重ねた結果、ChumTechが選んだ構成はシンプルでした。
| 役割 | 採用ツール |
|---|---|
| ドライバー入力UI | Googleカレンダー |
| データベース・出力 | Googleスプレッドシート |
| 自動連携 | Make(旧Integromat) |
| シフト最適化 | Gemini API |
ドライバーが日常的に使っているGoogleカレンダーをそのまま入力インターフェースにすることで、新しいツールの習得コストをゼロにしました。
当初はGoogle Apps Script(GAS:Googleのスクリプト実行環境)だけでカレンダー連携を組む案もありましたが、シナリオの可視化・エラー時のリトライ・将来的な他システム連携を考えるとGASだけでは限界が見えていました。Makeを間に挟むことで、フローをノーコードで組み替えられる柔軟性を確保しています。
「▶▶ QUOTE待ち:なぜChumTechに依頼したか、他社との比較や決め手について」(◯◯氏、代表取締役 or 管理担当)
3週間でスコープを絞り、ローンチに間に合わせる
11月に広範な要件定義を進めていた最中、11月24日の打ち合わせで「12月15日からUberタクシー連携を開始する」という最重要マイルストーンが固まりました。サービス開始まで残り3週間を切るタイミングです。
ここでChumTechが決断したのは、やりたいことを全部やらないこと。運行管理・給与計算まで含めた広い要件をいったん棚に置き、「ドライバーの勤務スケジュール作成」だけに的を絞りました。12月4日の打ち合わせで技術構成を合意し、開発を一気に進めます。
システムの全体像
ドライバー → Googleカレンダーに「【希望】」を入力
↓
Make → カレンダーを収集し、スプレッドシートに集約
↓
Gemini API → 希望データ+車両マスタをもとにシフト案を生成
↓
管理者 → AIの案を確認・修正・確定
↓
確定シフト → スプレッドシートに出力・閲覧
ドライバーの操作はカレンダーに書くだけ。稼働可能な時間帯を「【希望】」というタイトルで登録するだけで申請が完了します。専用アプリの操作を覚える必要はありません。
Makeのシナリオは2種類。管理者がスプレッドシートのボタンを押すと即時収集する「手動トリガー」と、毎月25日に自動発火する「定期トリガー」を用意しました。手動実行済みの場合は二重実行をスキップする排他制御も組み込んでいます。
Gemini APIがシフトを最適化。集まった希望データと車両マスタ情報を渡し、以下の制約条件のもとシフトを自動生成します。
- 同じ時間帯に同じ車両を複数ドライバーへ割り当てない
- 勤務間インターバル規制(前回勤務終了から8時間以内の連続勤務には警告)
- 月間最大勤務時間288時間の超過アラート
- 「稼働可」ステータスの車両のみを対象
タクシー業界特有の労働規制——月間最大勤務時間288時間・勤務間インターバルの確保——は、50台・100名規模へ拡大していく過程で違反が出ないよう、社労士の知見も取り入れながら設計段階からシステム要件に組み込みました。
最終確認は人間が行います。AIが出した案は管理者が目視で確認・修正できるフローにし、警告が出た行は必ず人間がチェックする運用としました。完全自動化より、確認できる余地を残すことを優先しています。
効果
管理者の手作業がほぼゼロに
2025年12月にプロトタイプ開発を完了。同月中に管理者・ドライバー向けの研修を実施し、2026年1月から5名体制での先行稼働を開始しました。
| 項目 | 導入前 | 導入後 |
|---|---|---|
| シフト作成 | 管理者が手作業で調整 | Gemini APIが自動生成、管理者は確認のみ |
| ドライバーの入力手段 | 口頭・電話・メール | Googleカレンダーに登録するだけ |
| 労務規制チェック | 手動確認 | システムが自動警告 |
| スケーラビリティ | 数名規模が限界 | 100名規模でも安定稼働できる設計 |
ドライバー側の変化も大きいものです。シフト申請のためにメールや口頭でのやり取りが不要になり、普段使いのGoogleカレンダーに希望を入れるだけになりました。
展望
次フェーズは売上管理・給与計算へ
シフト管理の自動化はあくまで「最初の一歩」です。次のフェーズとして、現在は売上管理・給与計算の自動化を開発中。勤務スケジュールと実際の売上データを連携させ、給与計算まで一連でデジタル化するロードマップが進んでいます。
さらに、Claude Codeを使った社内アプリの内製化フェーズにも着手済みです。SaaSをただ買うのではなく、自社の業務にぴったり合うシステムを自前で持つという選択肢が、AI時代には現実的になってきました。
ChumTechは今後も、現場が消化できるペースで段階的にシステムを拡げていく伴走支援を続けます。
会社情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | 株式会社プロジェクトID(運営:ウィングキャブ) |
| 事業内容 | タクシー事業 |
| 車両規模 | 50台(目標) |
| 所在地 | ▶▶ 要確認 |
| 設立 | ▶▶ 要確認 |
| 従業員数 | 5名〜(採用拡大中) |
| URL | ▶▶ 要確認 |
公開日:▶▶ 要記入
- タクシー事業のシフト管理をAIで自動化。約3週間で管理者の手作業をほぼゼロに。